組織形態の代表格であるピラミッド型組織により、これまで多くの会社が発展してきました。しかし、新型コロナウイルスにより市場が大きく変わる中で、組織について再度考える機会が増えた経営者は多くいることでしょう。
そこで今回は、組織づくりや組織変革をする上で知らなければならない「ピラミッド型組織」をテーマに、下記の点について解説していきます。
・そもそもピラミッド型(階層)組織とは何か
・ピラミッド型組織と自律型組織の違い
・ピラミッド型組織のメリットやデメリット
・強い組織づくりや変革に役立つフレームワーク
- ピラミッド型(階層)組織とは?
- ピラミッド型(階層)組織の特徴について
- ピラミッド型組織と自律型組織の違いについて
- ピラミッド型組織は古いのか?現在は自律型組織が注目を集めている
- ピラミッド型(階層)組織のメリット
- ピラミッド型(階層)組織のデメリット
- ピラミッド型組織が向いている会社とは?
- ホラクラシー組織が向いている会社とは?
- そもそも識学とは?
- ピラミッド型組織を目指す識学はフラットな社風・経営をどう捉えているのか
- ピラミッド型に移行することで強い組織づくりに役立つ会社もある
- 組織づくりのベストはそれぞれの会社により異なる
- ピラミッド型組織から自律型組織に移行する企業は増えている
- ピラミッド型組織から自律型組織に移行する際の注意点
- 強い組織づくりに役立つフレームワークや理論を紹介!
- まとめ:強い組織作りにピラミッド型組織は古いのか?~階層組織のメリット・デメリット~
ピラミッド型(階層)組織とは?
ピラミッド型組織とは従来の企業組織構造形態の一つであり、トップを中心として縦長の長い階層を作り、命令系統は上司から部下に降りていくものです。組織は、一般的に社長・部長・課長・社員というように役職が設けられ、階層型組織やヒエラルキー型組織とも呼ばれています。
ピラミッド型(階層)組織の特徴について
ピラミッド型の特徴としては、
・トップダウンの系統となっており、意思決定は上長から部下に徹底させる
・トップを頂点にして権力が上層に集中される
・階層による上下関係によりルールが徹底されていることが多い
・組織がでかくなると階層組織が細分化され役職も増える
などが挙げられます。
ピラミッド型組織と自律型組織の違いについて
ピラミッド型組織は、現在の日本で主流になっている組織であるとお分かりになったと思いますが、ピラミッド型組織と相反する組織形態として自律型組織というものがあります。
ピラミッド型組織では上下関係が存在し、指示系統も上から下へ降りてくるものですが、自律型組織には、上司と部下という関係は存在しません。ですので、自律型組織はフラット型組織とも呼ばれています。ピラミッド型組織とは違い、権力が組織の一部に偏ることなく分散され、各社員はそれぞれの役割のもと指示を受けることなく、主体的に動くことができるのです。
ただし、上下の規律として管理がなされない分、それぞれの社員が当事者意識を持つ必要があり、自律型組織の仕組みがしっかり整えられなければ企業は衰退してしまう可能性もあります。
ピラミッド型組織は古いのか?現在は自律型組織が注目を集めている
ピラミッド型組織は、高度経済成長期時代の発展を大きく支え、現在でも組織づくりの主流となっています。ピラミッド型組織は古いのか?と言われれば旧来からある組織形態ということで、歴史から考えれば古いと言えるでしょう。
高度経済成長期では、プロダクトが商売の基本となっており、労働集約型産業でピラミッド型組織は効力を発揮し、モノが売れる時代でした。しかし、現代ではプロダクトが成熟し、そして時代の変化スピードは速いものになっています。
昨今の新型コロナウイルスでは、社会情勢の変化スピードはさらに加速し、迅速に対応できる組織づくりが求められているため、各社員が主体的に考えて行動することができる、自律型組織が注目を集めているのです。
ピラミッド型(階層)組織のメリット
ピラミッド型組織のメリットとしては、
・昇進までのステップがイメージしやすく、人材安定に役立つ
・部門が細かく分かれているため、作業の専門性を高めることができる
・問題発生時には責任の所在がわかりやすい
・厳しい規律とルールが存在する
という点が挙げられます。
ピラミッド型組織では部長や課長などの責任者が意思決定者となり、組織単位ごとに目標が設定されます。そのため、各部門は与えられた職務を全うし定型業務での効率を追求できることがメリットにあります。
また、機能ごとに組織が形成されているので、問題が起こった場合には責任の区別がつけやすくなり、管理者はミスが起こらなくするために部下へ働きかけるようになります。
指示命令系統がわかりやすいというメリットがある
ピラミッド型組織は、基本原則として職務において一人の指示、命令を受けるようになっており、複数の上司から異なる命令が下されることが基本的にありません。(命令一元化の法則)ですので、指示を受けるべき対象が明確であるという点により、責任の所在が分かりやすくしますし、頼るべき存在も部下は把握することができます。
ピラミッド型(階層)組織のデメリット
ピラミッド型組織のデメリットとしては、
・組織が大きくなるとその分階層が高くなり、意思決定が遅れたりずれたりすることがある
・市場の変化に対応しにくい
・社員が主体的に動きにくく行動を一定に抑えてしまう
という点を挙げることができます。
組織が大きくなるにつれて階層が増えるため、情報の伝達が遅くなってしまう点が最大のデメリットになります。また、情報のやり取りが鈍化することにより、組織が硬直するので変化に併せてスピーディに対応するのが難しいと言えます。
ピラミッド型組織が向いている会社とは?
ピラミッド型組織は、部門が細かく分かれてそこに責任者が置かれる組織体系なので、大きい規模の会社を動かすのに向いている組織構造だと言えます。はじめは小さい組織であったとしても、中間管理者を増やしていくことで永続的に拡大していくことができます。
ホラクラシー組織が向いている会社とは?
ホラクラシー組織は、VUCAの時代(あらゆる環境が変化し、社会経済環境が予測困難な状態)に、今注目されている自律型組織のひとつです。ホラクラシー組織は、役職や階級がなく、円形で組織が表現され、役割が割り当てられる形になっています。
このホラクラシー組織は、セルフマネジメントが行える社員の集合体でなければならず、それぞれの社員が主体的に動ける組織に向いています。組織風土として、社員のそれぞれがコミュニケーションを円滑にとれる環境であれば、比較的導入もしやすいのではないでしょうか。
現在でもピラミッド型(階層)組織を推進している会社もある~識学~
VUCAの時代において、変化に対応できる自律型組織が注目を集めているものの、ピラミッド型組織が企業を拡大するものとして推進している会社もあります。それが識学です。TVなどでコマーシャルが打たれていたこともありますので、ご存知の方もいるかもしれません。
そもそも識学とは?
「識学とは、人が事象を認識して行動に至るまでの思考の働き(=意識構造)を分析し、組織運営に応用した独自の理論です。」
引用:識学
識学は、誤解や錯覚の原因である人それぞれが持つ思考の癖に着目した、独自の理論をベースにした組織マネジメント手法で、生産性が格段に向上するとしています。組織内のゆがみには、「当事者意識」「指揮系統」「評価」「育成」「責任」があるとされ、これらを正す理論とも言われています。
識学の言う組織内のゆがみとメソッドについて
当事者意識…自身の勤める会社の批判をする会社が発生している
指揮系統…直属の上司を飛ばして直接指揮してしまう
評価…人が離職してしまう
育成…管理者層や一般社員などが育たない
責任…責任を外部に転嫁してしまう
これらを正して生産性阻害要因をすることで、パフォーマンスをアップさせるというのが識学ですが、ピラミッド型組織を形成させる識学のメソッドには、「結果だけを評価してプロセスは評価しない」「会社は社員のモチベーションを気にしない」「上司と部下は必要以上に仲良くならない」というものがあり、賛否両論があるのも事実です。もちろん、これらの言葉の裏側にはしっかりとした意味があるわけですが、軍隊的であると言われる所以がメソッドの中にあるのです。
「部下をしっかり管理し、部下の成長に責任を持ち、モチベ-ションを気にせず、必要なストレスをかけ続けることが大変重要であり、これこそが上司がやるべきことなのです。」
引用:https://souken.shikigaku.jp/368/
ピラミッド型組織を目指す識学はフラットな社風・経営をどう捉えているのか
では、強い組織づくりのためにピラミッド型組織を目指す識学は、フラットな経営をどう捉えているのでしょうか?結論からして、フラットな組織だと、「組織は成長することができない」「組織を滅ぼす」としています。もちろんこれらは識学の考え方からするとです。
フラットの組織だと、頑張りやプロセスを評価することで無駄な仕事やロスタイムが生じやすくなり、必要のない残業につながったり、頑張る姿を演出してしまうようになると言うのです。また、フラットな社風では、ルールを設定する権限をメンバーが持っていると勘違いしてしまい、組織が機能しないとも言っています。
自律型組織のようなフラットな組織には、上下関係による人間関係の悪化を避けたり、市場の変化に対応できたり、個々が主体的に行動できるという現代に合ったメリットが多いですが、識学ではフラットな組織には成長を鈍化させる要因があると捉えています。
ピラミッド型に移行することで強い組織づくりに役立つ会社もある
ピラミッド型の組織は、市場の変化に対応しにくく、指示系統が上意下達であるため各社員の主体性が育たないというデメリットを持ちますが、フラットな組織からピラミッド型の組織に移行することで、強い組織づくりに役立ったとする会社もあります。
HIKAKIN氏が最高顧問を務めているUUUM株式会社がそのひとつで、識学を導入したことで明確な評価基準ができたと識学のサイトでは記載していますが、中にいた社員からすると、納得感は非常に少なく、特にエンタメなどを扱った事業の場合は、社風に、合う、合わないが存在しているのも事実です。体育会系の会社であったり、営業会社であれば比較的相性はいいと思います。企業として導入すると金額的には結構するので、興味のある方は、まずは書籍からが良いと思います。
組織づくりのベストはそれぞれの会社により異なる
ピラミッド型組織は旧来からあるもので、現代でも組織づくりの主流であり大規模にも適したものです。しかし、ピラミッド型組織だと市場変化の速い現代では、問題点が見つかることも多くあります。そこで自律型組織が注目を浴びており、テレワークの流れなども相まって、自律型組織の要素を取り入れようとする企業も多くあるでしょう。また、自律型組織には多くのメリットがありますが、デメリットも存在し、識学のように改めてピラミッド型組織に目を向けている企業も存在します。
自律型組織だから良い、ピラミッド型組織だから良いと一言で片づけることはできませんし、自律型組織もピラミッド型組織の典型も、すべての企業に合うというものでもありません。組織づくりの形は1つではなく、会社がこれまでに培ってきた組織風土やそれぞれの会社の色が組み合わさって生まれるものなのです。
あくまで組織づくりの手法などは、成長させるためのベースとして、取捨選択をしながら取り入れていきましょう。
ピラミッド型組織から自律型組織に移行する企業は増えている
フラットな組織からピラミッド型の組織への変革をした会社を紹介しましたが、それよりも自律型組織からピラミッド型組織への移行を考える企業は増えています。そもそもの主流がピラミッド型であることはもちろんではあるものの、昨今の新型コロナウイルスによる景気の悪化、それに伴うテレワークの導入などにより、今までにはない形で変化を求められています。
つまり、これまでのやり方が通用しなくなってきている現代では、変化への追従なくしては生き残っていくことが難しくなっているのです。これは、経営における戦略の部分だけでなく、組織づくりにも大きく関わっていますし、さまざまなビジネスモデルが誕生したり、リブランディングをする企業が増えていることにも繋がっています。
今までピラミッド型組織として経営をしていた場合は、完全に移行するというのは時間がかかりますし、難易度も高いため、自律型組織の持つ良い部分に目を向けて選択しながら取り入れることを検討されてみてはいかがでしょうか。
ピラミッド型組織から自律型組織に移行する際の注意点
自律型組織に移行するということは、一部に集中した裁量が各々に割り振られることとなります。そこで発生しやすいのは、意見のぶつかり合いです。また、これまで役職者の管理下に置かれていた状況から、責任と権限も分散されるわけですから、信頼して任せると言っても不安になってしまうことがあるでしょう。
意見がぶつかり合うのは、指針が社員に伝わっておらず、目的が分からない状態から起こります。ですので、経営理念の浸透を促すために、説明の機会を増やしたりコミュニケーションの中で評価制度の中に取り入れたりしていきましょう。
信頼して任せると言っても不安になってしまう…
松下幸之助の言葉に、「任せて任せず」という言葉があります。
「任せてはいるけれども、たえず頭の中で気になっている。そこでときに報告を求め、問題がある場合には、適切な助言や指示をしていく。それが経営者のあるべき姿だと思います。これは言いかえますと、”任せて任せず”ということになると思います。任せて任せずというのは、文字どおり”任せた”のであって、決して放り出したのではないということです」
出典本:「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」
上の言葉の中に、「ときに報告を求める」「決して放り出したのではない」という文面がありますが、これは自律型組織の移行における強い組織づくりの過程にも、繋がるのではないでしょうか。自律型組織の移行で任せることに不安を覚えてしまうのであれば、役割を設けて状況を確認し、問題があれば修正する。また、権限を分散させて主体性を持ってもらうために行っていることなので、責任を放り出すという意味合いとして捉える必要はないでしょう。
強い組織づくりに役立つフレームワークや理論を紹介!
強い組織づくりや組織形態の移行において、課題点はどう見つければ良いか、どう問題を解決すれば良いかという点に悩まれる経営者の方もいらっしゃるでしょう。そこで、最後に組織づくりに役立つフレームワークや理論を紹介します。
Will・Can・Must
自律型組織では、各社員に役割を与えることとなりますが、その際に適材適所を考える必要があります。そこで役立つのが、Will・Can・Mustのフレームワークです。
Will:やりたいこと
Can:できること
Must:やるべきこと
以上の3つから成り立っており、これらに共通する部分を見つけることで、その人にとって最適な業務や活動の領域を探すことができます。また、組織と個人で上記を照らし合わせることで、方向性をすり合わせることも可能です。
マズローの欲求五段階説
アブラハム・マズローの提唱する「欲求五段階説」は既にご存知の方も多いでしょう。これはビジネスでも応用して考えることができるもので、人が抱く欲求には、
・自己実現欲求…自分の才能や能力を発揮したい
・承認欲求…価値ある存在として認められたい
・社会的欲求…仲間や友人といった他社とのつながりを持ちたい
・安全欲求…安心して生活したい
・生理的欲求…衣食住が充実して睡眠をとりたい等
の5段階があるとしています。
下の欲求が満たされれば、上の欲求に向かうようになり、上に行くほど組織のパフォーマンスも高くなります。組織づくりに活かす場合には、これらの欲求を満たすことができる環境が整えられるかという観点で、活用しましょう。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは、存在意義(ミッション)・ありたい姿(ビジョン)・価値観(バリュー)から成り立っており、それぞれの簡単な意味が下記になります。
・存在意義(ミッション)…企業が社会において果たす役割
・ありたい姿(ビジョン)…中長期的に目指す姿・実現したい姿
・価値観(バリュー)…日々の姿勢や行動の基準となる価値観
これらを明確にすることで、社員一同同じ目的に向かって進むことができ、自律型組織においても各々がブレることなく、意思決定を下すことができるようになります。
変革の8段階プロセス
変革の8段階プロセスとは、ジョン・P・コッター氏が提唱したプロセスで、下記の8段階から成り立っています。
① 危機意識を高める…自社にとっての危機や絶好の成長機会を見つけ、現状を変える必要性を生み出す。
② 変革のためのチームを築く…変革をリードする、スキルや人脈などのある人物を担い手にする。
③ ビジョンと戦略を生み出す…組織を変革させるためのビジョンを作り、ビジョンを実現するための戦略を立案する。
④ 変革のビジョンを周知徹底する…継続的なコミュニケーションなどのあらゆる手段で設定したビジョンをメンバーに伝える。
⑤ 従業員の自発的を促す…変革においてそれを阻害する要因を取り除いて、自発的行動を促す。
⑥ 短期的な成果を実現する…目に見える形で成果を上げて、貢献を認知する。
⑦ 成果を生かしてさらに変革を進める…短期的な成果をもとに変革に勢いをつけて改革を推し進める。
⑧ 変革を定着させる…変革ビジョンに基づいた新しい方法を企業文化として根付かせる。
組織の変革においては、まず危機意識を持ち率先して動くチームが必要です。上記のプロセスを参考に、ビジョンを浸透させながら、まずは成果を上げましょう。
まとめ:強い組織作りにピラミッド型組織は古いのか?~階層組織のメリット・デメリット~
いかがでしたか?皆さんが経営する会社の組織づくりや変革のヒントになったのではないでしょうか?組織づくりや変革を進めていく上で、改めてピラミッド型組織について考えることは非常に大切なことであり、それが自律型組織へ移行する場合であっても役立ちます。
現在組織にゆがみを感じている方や、組織の変革を本気になって進めたい方は、今回紹介したフレームワークなどを活用していただき、課題を解決していきましょう。