ビジネスモデル×仕組みづくり×マーケティングを得意とするケイティです。
会社を立ち上げる時の法的な規定ってあるの?
起業を考えているけど、具体的な流れが分からない…。
株式の募集の仕方や、株式会社にするのか?合同会社にするのか?などが決められず困っている起業家さんも多いでしょう。
起業をするなら、まずは会社法について知っているのが大前提です。これが分からなければ、どうやって会社を立ち上げるのか、その道筋が決められません。また会社を立ち上げたとしても、会社法に違反すれば罰則が課せられる可能性があります。
また、既に会社を経営されている方にとっても会社法は重要です。知らぬ間に違反してしまう可能性もあるので、しっかりと押さえておきましょう。
そこで今回は、会社法の概念や具体的なルール、対象となる企業や違反した際のペナルティについてご紹介していきたいと思います。
会社法とは
会社法とは、簡単に解説すると「会社の規律を定めた法律」です。施行日は2006年5月1日と比較的新しく、さまざまな企業が該当する内容を取り決めています。
会社法を押さえておくべき企業・経営者とその所管について
会社法は比較的新しくできた法律ですが、会社存続に関わる基本的なルールであるという理由から、どのような業種であってもすべての経営者が押さえておく必要があります。
また、順調に会社経営をしていたとしても、会社法を知らなかった事で罰金となり、足元がすくわれてしまうという事態にも・・・。
会社法の所管は「法務省」になりますが、詳しい罰金の金額についてや、事例などを知りたい方はこのまま読み進めていただければと思います。
会社法を知る3つのポイント
会社法を知るうえで押さえておきたい、3つのポイントをご紹介します。
ポイント①:会社経営に欠かせない義務・ルール
会社の立ち上げや解散、組織運営、資金調達など、あらゆる義務・ルールを法で定めているのが「会社法」です。会社経営に大きな影響を与える、重要なポジションに位置しています。
ポイント②:3つの法律を一本化したもの
会社法は、3つの法律を一本化・再編成しています。会社法が2006年に施行されるまでは、以下3つの法律から「会社に関連する項目」をピックアップして適用していました。
・商法第2編
・株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律
・有限会社法
ところが上記の状態では、各項目を理解し、実際に反映するまでとても時間がかかります。「分かりやすさ」「適用のしやすさ」を考えると、不便な部分が多い状態でした。
改めて「会社法」という名の法律にまとめることで、明確かつ利用しやすくしています。
ポイント③:任意法規ではなく「強行法規」である
会社法は、何があっても法律の定めた内容を無効にできない「強行法規」です。民法とは異なり、会社法で定める内容は経営の「利害」に関わる内容であるため、当事者の意思で法内容とかけ離れた対応は原則許されません。
会社を経営するすべての人が会社法を理解し、決まった義務・ルールに従うのが基本なのです。
会社法の構成は大きく8つ
会社法を読み解いていくと、総則から罰則まで大きく8つの構成に分かれます。
①総則(第1条~第24条)
用語の定義や商号に関する内容を定めています。すべての会社に該当する一般的な規定を記述しているのが特徴です。
②株式会社(第25条~第574条)
株式会社経営に関わる以下の内容を定めています。
・株式会社設立の手順
・募集株式や新株予約権の発行手順
・株主総会や取締役会機関の設置方法
など
③持分会社(第575条~第675条)
以下の3種ある持分会社について、各会社形態に関する規定を記述しています。
・合名会社
・合資会社
・合同会社
④社債(第676条~第742条)
社債に関する規定を記述しています。
・募集社債
・社債譲渡
・社債権者集会
⑤組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転(第743条~第816条)
M&Aに関わる規定を記述しています。
・会社組織の再編や変更、合併
・会社分割割(吸収分割と新設分割)
・株式交換
・株式移転
⑥外国会社(第817条~第823条)
外国会社(=日本で外国の法律に準拠する形で設立している社団法人)に関わる規定を記述しています。
・日本で取引する場合における代表者の選定方法
・外国会社登記前の継続取引禁止
・外国会社登記後の公告
など
⑦雑則(第824条~第959条)
上記①~⑥では規定していない会社に関わる幅広い内容を定めています。
・株式会社の解散命令
・訴訟、非訟、登記
・公告に関する規定
・損害賠償など起訴のルール
・会社の登記方法や登記期限
⑧罰則(第960条~第979条)
会社法を違反した場合の罰則について記述しています。
・取締役等の特別背任罪
・代表社債者等の特別背任罪
・虚偽文書行使等の罪
・取締役等の贈収賄罪
・株主等の権利の行使に関する贈収賄罪
など
会社法の適用ケース
実際に会社法が適用となるケースとして、「募集株式の発」「法人マイナンバー(法人番号)の付与」の2つをご紹介します。
募集株式の発行
株式会社は、経営を円滑に進めていくために資金調達が必要です。
・金融機関からの融資
・新株の発行
・自己株式の処分
・社債の発行
このように、資金の調達方法には主に4つの手段があります。このうち「株」に関わる内容については、以下のように会社法で定めています。
会社法第199条以降 | 新株の発行、自己株式の処分について |
社法第199条第2項
会社法第200条 |
募集株式の募集事項の決定には、株主総会の決議が必要である |
201条1項 | 公開会社では募集事項の決定は取締役会の決議が必要である |
会社法第214条 | 株券は原則として発行しなくてもよい |
会社法第127条 | 株式を自由に譲渡できる |
法人マイナンバー(法人番号)の付与
法人マイナンバーは、1つの法人に対して1つの法人番号を付与します。この1つの法人番号は、会社の住所に通知します。「会社」の住所とは言え、本店や支店、親会社、子会社と各住所を複数保持している法人も多く、付与先が定まりません。
ここで会社法の登場です。会社法では「『会社』の住所は本店(本社)の所在地であるものとする」と明確に規定しています。つまり、本店や支店、親会社、子会社とさまざまな会社があったとしても、法人マイナンバー(法人番号)は本社(本店)にしか付与できないのです。
会社法の対象企業
(旧)会社法 | (新)会社法 | |
株式会社 | ・株式会社
・有限会社 |
・株式会社 |
持分会社 | ・合名会社
・合資会社 |
・合同会社
・合名会社 ・合資会社 |
会社法で明記している「会社」は「株式会社」「持分会社」の大きく2つに分類できます。ちなみに、有限会社制度は改正法によって消滅したため、新規設立はできません。新に「合同会社」を追加し、3つをまとめて「持分会社」と呼びます。
「持分会社」の特徴
持分会社とは、出資者同士が集まった会社を指しています。出資者を「社員」と呼び、社員が経営の主導権を保持しているのが特徴です。
「株式会社」の特徴
株式会社とは、不特定多数の出資者から集めた資本金で事業を展開する会社を指しています。出資者を株主と呼び、経営を執り行う役員と区別しているのが特徴です。
会社法で定義している役職
会社法では役員として「取締役」「会計参与」「監査役」の3つを定義しています。経営に欠かせない立場であるため、従業員ではなく「経営者」と呼ぶのも特徴です。
役職 | 特徴 |
取締役 | ・株主総会で選出
・株主の評価が強く影響するため、会社にとっても非常に重要なポジション ・任期は2年 |
会計参与 | ・認会計士・税理士といった国家資格を保持する者、もしくは監査法人が担当
・取締役や執行役と共同で、会社の会計関連の手続き・処理を実行する |
監査役 | ・取締役の職務を独自に調査し、不正の有無を確認する
・調査に関連するさまざまな権限を保持している |
会社法違反の罰則と実例
会社法を違反した場合、どのような罰則・ペナルティが発生するのかをご紹介します。
会社法 | 要件 | 罰則 |
963条5項 | 取締役等による不正な株式を取得、規定を無視した剰余金の配当、投機取引を背景とした目的の範囲外における会社財産の処分をしたとき | 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金または併科 |
960条 | 運営に重要な役割を果たしている者が、任務に背く行為をして財産上の損害を加えたとき | 10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金または併科 |
970条 | 株主の権利行使に関して、株主などに財産上の利益を与えたとき | 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 |
会社法違反の実例
上場企業であるバイオ燃料会社が2017年3月期決算において、キャッシュフローがマイナス約9憶6,000万円にも関わらず、プラス1憶3,000万円と偽り報告書を提出したとして、実質経営者が3人起訴される事件が発生しました。
この他にも、有名なアニメ制作会社や振袖販売・レンタル会社などさまざまな業界の企業に粉飾決算等不正会計の容疑がかけられています。粉飾決算をする理由は、融資の継続・各機関や株主への体裁の維持・上場維持などさまざまです。
粉飾決算を社長が実行したり指示したりした場合、「特別背任罪(会社法960条)」に問われる可能性があり、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金又はこれらの両方が科せられる可能性があります。
出典:コンプライアンス事例集|発生原因や企業がすべき正しい対処法:企業法務弁護士ナビ
まとめ:起業家に欠かせない会社法とは?概要や対象企業もご紹介
起業家の方には避けて通れないのが「会社法」です。
会社法は非常に複雑でボリュームもあるため、最低限、基本的な知識を押さえておいてください。
会社法は今後も改正が行われる可能性があるので、今後の動向にご留意ください。
※専門性の高い記事になりますので、ライターである佐藤がこの記事を作成致しました。