下請事業者の利益を守る「下請法」とは?基礎知識を解説! | ゼロワン研究所

2020.7.11

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下請事業者の利益を守る「下請法」とは?基礎知識を解説!

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どうも、ケイティです!

今回は、「下請法」について解説していきます。まず、下請法とは親事業者から下請事業者に公正な取引が行われるよう、下請事業者の利益を守るために定められました。

正しくは「下請代金支払遅延等防止法」といい、独占禁止法の補完として制定されています。

多くの場合、親事業者は大企業が多く下請事業者は個人事業者や中小企業というケースです。
親事業者は下請事業者より優位な立場と考え、この関係性を利用して無理な要求や不当な要求をされ悩んでいる経営者の方もいるのではないでしょうか?

一定の条件が合えば、公正取引委員会から違反行為を取りやめるように勧告されます。
違反をしてしまえば企業名などが公表されてしまうため、自社の評判にも影響が出てしまいます

これから下請法について詳しく、違反事例もあわせてご紹介していきます。

下請法の適用となる要件とは?資本金の金額は?

下請法では資本金等により、親事業者と下請事業者を定義しています。取引内容と資本金区分の要件が満たされると適用となります

4つの対象となる取引内容

対象となる取引は大きくわけて、4つのタイプに分類されています。
製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4タイプです。

製造委託

物品販売や製造を請け負う製造業者や販売業者が規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを指定して製造や加工を他の業者に委託することいいます。

例えば、精密機器メーカーが受注生産するために必要な精密機械に用いる部品の製造を部品のメーカーへ委託したり、スーパーやデパートが独自のプライベートブランドの商品を食品メーカーに委託するなどが該当します。

なお、物品とは動産のことを指しているため、家屋などの建築物は対象になりません。

修理委託

物品の修理を自社で請負い、その修理を他の事業者へ委託したり、自社で使用する物品を自社で修理していて修理の一部を他の事業者へ委託することをいいます。

例えば、自動車のディーラーが請負った自動車の修理を修理会社へ委託したり、自社で使用する特殊な機器を自社で製造している工作機器メーカーが一部の部品の製造を部品メーカーに製造委託するなどが該当します。

情報成果物作成委託

ソフトウェア、映像や音声コンテンツ、設計図など各種デザインの情報成果物の提供や作成をする事業者が、他の事業者へ情報成果物の作成や作業を委託することをいいます。

例えば、放送事業者がテレビやラジオの番組の制作を番組制作会社へ委託したり、建築会社が請負った設計図面の作成を外部の建築設計会社へ委託するなどが該当します。

役務提供委託

運送、ビルメンテナンス、顧客サポートなど各種サービスを営む役務の提供をする事業者が請負ったものを他の事業者へその役務の提供を委託することをいいます。例えば、デジタルコンテンツ会社が自社のホームページのコンテンツの作成をホームページ制作会社へ委託したり、貨物運送業者が請負った貨物運送業務の一部経路をトラック運送会社へ業務委託するなどが該当します。

2つの資本金区分

引用:公正取引委員会
・物品の製造・修理委託及び、政令で定める情報成果物の作成委託、役務提供委託(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管情報処理に係るもの)をする場合

親事業者 下請事業者(個人を含む)
資本金3億1円以上       ➡︎ 資本金3億円以下
資本金1千万1円以上3億円以下       ➡︎ 資本金1千万以下

・情報成果物の作成委託、役務提供委託取引(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管情報処理に係るものを除く)を行う場合

親事業者 下請事業者(個人を含む)
資本金5千万1円以上       ➡︎ 資本金5千万円以下
資本金1千万1円以上5千万円以下       ➡︎ 資本金1千万円以下

資本金が少ない事に対してメリットとデメリットがあります。
資本金が少ないと大手の企業の与信調査に落ちてしまう可能性が出てきます。

どういう事かというと、デメリットとしては、与信調査に落ちてしまう可能性があるという事。きちんと払われない可能性がある為、前入金でないと対応してもらえない事もあります。

しかし、資本金が多い親事業者と少ない下請事業者では後ほど、説明しますが原則60日以内に入金がされないと違反行為になり裁判で親事業者は負けてしまいます。

資本金が少ない下請事業者は仕事をいただいているから・・と弱い立場になりやすいですが、このようにメリットにする事もできるという事。

親事業者が守るべき4つの義務

口頭トラブルを防ぐために、親事業者は発注に当たり4つの義務があります。口約束では言った、聞いていないとトラブルになるのでしっかり書面を交わす必要があります。

発注書面の交付

発注者は発注内容を明確に記載した書面の交付をしなければなりません。
記載事項は以下になります

(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法

引用:公正取引委員会:親事業者の義務

支払期日

支払期限の変更や遅延は、下請事業者に大きな影響を与えてしまいます。
下請事業者の経営が不安定にならないように、下請代金の支払期日を明確に決めることが義務付けられています。

支払期日は受注した物品の「受領後60日以内」で、できるだけ短期間になるように定める必要があります。

書類の作成・保存

下請取引が完了した場合、親事業者はその取引の経緯を記録した書類を作成し、2年間保存しなければなりません
親事業者の違反行為に対する注意喚起と公正取引委員会や中小企業庁の調査や検査に役立ちます。

遅延利息の支払い

支払期日までに親事業者が下請代金の支払いをしなかった場合、遅延利息を支払わなければなりません

物品などを受け取った日から60日を経過した日から支払いをした日までのまでの期間、年率14.6%の利息を払う事になります

下請適正取引等に関しての18業種のガイドライン

国が策定した、下請適正取引等に関して18業種のガイドラインがあります。

1.素形材産業
2.自動車産業
3.産業機械・航空機など
4.繊維産業
5.情報通信機器産業
6.情報サービス・ソフトウェア産業
7.広告
8.建設業
9.建材・住宅設備産業
10.トラック運送業
11.放送コンテンツ
12.金属、化学産業
13.紙・加工品産業
14.印刷業
15.アニメーション制作業
16.食品製造業・小売業(豆腐・油揚製造業)
17.食品製造業
18.小売業(牛乳・乳製品製造業)

の18業種があります。

親事業者と下請事業者の間で適性に取引が行われるようにと18業種のガイドラインが記載されています。下記のサイトからご自分の業種に当てはまるものを確認してみてください。

中小企業庁:下請適正取引等推進のためのガイドライン

下請法違反になる禁止行為

下請法では親事業者に対して11の禁止行為を定めています。
親事業者と下請事業者が合意をしていても、禁止行為をしてしまうと違反行為になるので注意が必要です。

書面調査で年間50万社近く調査が入るので違反していないかしっかりチェックしてください。

これを押さえておく事で、親事業者と下請事業者にとって良好な関係を築くことができます。知らずに違反してしまった・・・ということの回避もできます。
違反をしてしまうと、

企業名や違反内容が公表される
最高50万円の罰金が科せられる

企業名や違反内容が公正取引委員会のホームページで公表されるため、違反をしてしまうと世間に知られてしまうので自社の評判が悪くなってしまいます
今後の取引にも影響しかねないので下記の禁止行為をしっかり押さえておくことが大事です。

1.発注した物品等の受領拒否
2.下請代金の支払遅延
3.下請代金の減額
4.発注した物品等の返品
5.買いたたき
6.報復措置
7.物(製品、原材料など)の購入強制・役務(保険、リース等)の利用強制
8.有償支給原材料などの早期決済
9.割引困難な手形の交付
10.不当な給付内容変更、やり直し
11.不当な経済上の利益の提供要請

参考:公正取引委員会:親事業者の禁止行為

下請法においての違反事例

実際にどのような違反があったのか、違反事例を参考にしていただけると分かりやすいかと思います。
大手通販会社の(株)ニッセンの違反事例をご紹介します。

違反内容としては、3つ(下請代金の減額、発注した物品等の返品、不当な経済上の利益の提供要請)の禁止行為にあたります。

(株)ニッセンに対する件

衣料品,家具,雑貨等の製造委託に関し,

(1)「事務手数料」として下請代金の額に一定率を乗じて得た額を差し引くことにより,下請代金の額を減じていた。
(133名に対し,総額1410万8202円を減額)

(2)下請事業者の製造した商品を受領した後,販売期間が終了した際の在庫商品又は受領後6か月を経過した商品を引き取らせていた。
(102名に対し,総額2841万799円の下請代金相当額の返品分を引き取らせていた。)

(3)前記(2)の受領後6か月を経過した商品の返品を行うに当たり,返品に係る送料を提供させていた。
(75名(総額は未確定))

(1)第4条第1項第3号(減額の禁止)
(2)第4条第1項第4号(返品の禁止)
(3)第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)
平成24年9月21日

出典:公正取引委員会:下請法勧告一覧(平成24年度)

まとめ

下請法に違反すると親事業者は企業名、違反内容が公正取引委員会のHPに公開されてしまう為、自社のイメージダウンに繋がり、今後の取引にも影響が出てしまう可能性があります

下請事業者にとっても、代金が支払われず利益の確保ができなくなってしまいます。

親事業者は大手企業であることが多く、下請事業者は中小企業や個人事業の方が多い為、下請事業者は力関係においても不利になりやすいのが現状です。例えば、支払期限に入金がなくても下請法で守られていることもあり、有利に立つ事もできます

下請事業者の利益保護」のために作られた法律ですが、「親事業者と下請事業者の公正な取引のため」という目的もあるので公正な取引ができるお付き合いが今後の自社にも求められます。

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